第2章 訴えの変更と当事者変更
訴えの変更 任意的当事者変更
第3章 共同訴訟
通常共同訴訟 必要的共同訴訟 同時審判共同訴訟 選定当事者制度
第4章 第三者の訴訟参加
共同訴訟参加 共同訴訟的補助参加 独立当事者参加 補助参加と訴訟告知 第三者の引込み
第四編 複雑な訴訟形態
第1章 請求の客観的併合
1 発生原因
(1)原始的客観的併合
(2)訴えの変更
(3)反訴
(4)中間確認の訴え
(5)裁判所による弁論の併合
2 要件
(1)同種の訴訟手続きによって審判できること
(2)請求の併合が禁止されていないこと
(3)各請求につき受訴裁判所に管轄権があること
3 請求の客観的併合の態様
(1)単純併合
他の請求の当否にかかわらず、併合されたすべての請求につき審判を求める併合態様をいう。
(2)予備的併合
主位的請求の認容を解除条件として、予備的請求につき審判を申立てる請求の併合態様である。
(3)選択的併合
数個の請求のうちいずれか一個の請求が認容されることを、他の請求についての訴えの申立の解除条件とする併合形態をいう。
最判平成元年9月19日
「選択的併合の関係にある一の請求を認容した原判決に対する上告審において他の請求を認容するときは、原判決は、当然に失効する。」
コメント:(ア)選択的併合において、請求の一方を認容する場合には、残りの一方の請求は失効するので、裁判所は、残りの一方について判断を示す必要はなくなる(∵解除条件が成就するから)。残りの一方が訴訟要件を欠く場合であっても、その旨を判示する必要はない。
(イ)そして、上訴との関係で、主文で残りの請求について失効したということを明記するべきかについては争いがあるものの、本判決は、明記する必要はないとする立場に立つ。
4 客観的併合請求訴訟の審判
(1)審理 訴訟資料・証拠資料は共通となる(松本)。
(2)判決 原則として、判決は一つとなる。
(3)上訴 一つの全部判決ならば、上訴により事件全体につき判決が確定を遮断され、移審する。
第1節 訴えの変更
1 意義
訴えの変更とは、訴訟係属後、審判の対象を変更することをいう。
2 訴えの変更の態様
(1)追加的変更と交換的変更
(2)請求の縮減は、訴えの変更にあたる場合と訴えの一部取下げにあたる場合の二つがある。
(3)攻撃防御方法の変更は、訴えの変更にあたらない。
3 訴えの変更の要件
(1)請求の基礎の同一
(2)著しく訴訟手続きを遅滞させないこと
(3)口頭弁論終結前であること
(4)弁論の併合の要件
(5)訴えの交換的変更と被告の同意
4 訴え変更の手続き
(1)訴えの変更は、被告の防御に大きな影響を及ぼすから、書面を提出してしなければならない。
(2)訴え変更の許否
許すとき− 何もしない。判決理由中で明らかにすれば足りる。
許さないとき− 訴え変更不許の決定をする<143条4項>。
第2節 当事者変更
1 意義 当事者が変更すること
2 法定当事者変更
(1)訴訟承継
(2)独立当事者参加
(3)共同訴訟参加
(4)訴訟脱退
(5)選定による脱退
3 任意的当事者変更
(1)狭義の任意的当事者変更
(2)当事者引き込み 追奪担保等の填補型・権利者指名型・責任転嫁型(前二者については認めるのが高橋)
4 任意的当事者変更<狭義>
(1)新訴(主観的追加的併合)の訴えの提起と旧被告に対する旧訴の取下げとが、一緒になされているにすぎない。(特殊行為説については、明文がないのにかかる特殊な効果を認めるのは解釈論としていきすぎである)。
(2)効果 – 法定当事者変更と異なり、訴訟状態承継義務は原則生じないが、従前の訴訟資料は、弁論の併合の効果としてそのままの性質で流用できる。なお、旧当事者と新当事者が同一視できるような場合には、新当事者は、信義則上従前の訴訟状態に拘束されると考えるべきである。
第3章 共同訴訟
第1節 共同訴訟の原因
(1)原始的追加的併合
(A)通常共同訴訟
(B)訴えの主観的予備的併合
※判例は不適法とする。∵(1)予備的被告の地位が不安定となる。また、(2)上訴審における統一審判が保障されるわけではない。(3)同時審判申し出訴訟で充分。しかし、高橋は、次のように反論する。(1)については、争点効が生じるから地位は不安定とならない。(2)については、40条を類推するから、上訴審でも、統一審判は保障される。(3)については、同時審判申し出訴訟は、上訴との関係で問題があり、同時審判申し出訴訟では充分でないと。ここでは、判例にのっておく。そんなに訴えの予備的併合が使いやすいものであるならば、民事訴訟法改正時に採用されたはずと考えるからである。
(2)訴えの主観的追加的併合
(A)共同訴訟参加
類似必要的共同訴訟となる場合の共同訴訟参加
固有必要的共同訴訟で脱落している者を当事者として加えて適法とするための共同訴訟参加
(B)引受承継(同時審判申出訴訟と同様の審判態様となる)。
※参加承継(独立当事者参加と同様の審判態様となる)のときは、三面訴訟となるので、主観的追加的併合には含まれない。
(C)追加的選定をして、選定を取消した場合
共同訴訟となるとする有力説からは主観的追加的併合となる。一方高橋は別訴となるとする<法教206号64頁>。
(D)それ以外の主観的追加的併合
判例は不適法とする(最判昭和62年7月17日<百選U168事件>)。もっとも、当事者を間違えた場合になされる任意的当事者変更のごとき場合は訴訟が複雑化しないので、例外的に認められると解しても、この判例に反することにはならないのではないか。
(3)弁論の併合(後発的通常共同訴訟となる)
※同時審判の申し出がなされ、同時審判申し出訴訟となる場合がある。
第2節 通常共同訴訟
1 通常共同訴訟の要件
(1)請求の併合要件、訴訟要件
(2)請求の関連性
(A)権利義務共通
@土地の共有者が不法占拠者に対して明渡しを請求する場合
A連帯債務者、不可分債務者に対して債権者が訴えを提起する場合
(B)権利義務の原因共通
@同一の交通事故の被害者
A移転登記抹消請求(買主とその転得者に対して、売買無効を理由として)
B土地所有者が、建物所有者とその賃借人を相手に明渡し請求
(C)権利義務同種
@保険会社が、複数の保険契約者に対して保険料を支払請求する場合
A大家が、複数の賃借人に対して賃料を請求する場合
※争いがある場合
@債権者Xが主債務者と保証人を訴える場合 (権利義務の原因共通とすべき)
A手形の振出人と裏書人を訴える場合 (権利義務の原因共通とすべき)
なお、38条の要件は強行的なものではなく、当事者に異議がない場合には、共同訴訟として審理される(法教259注3)。
2 共同訴訟の審判
(1)共同訴訟人独立の原則
(ア)訴訟手続きの進行の統一は保障されない(同時審判申出訴訟を除く)。
共同訴訟人の一人に生じた事由により中断したときには、他の共同訴訟人にはその効力は生じない。
共同訴訟人の一人だけが上訴したときには、その者との関係でのみ、確定遮断効・移審効が生じる。
(イ)訴訟資料の共通は保障されない。
主張共通は認められない。
(争いあり。当然の補助参加を認めた上で、抵触行為により無効とする道を残しておけばよいとする説もある)。
(2)証拠共通の原則
証拠については、証拠共通が認められる。事件ごとに異なる証拠により異なる心象を形成しなければいけないというのは、
自由心証主義の観点から相当でないと認められるからである。
また、共同訴訟人は、証拠調べ続きに関わる機会が与えられているから証拠共通であっても不都合はない。(双書451頁)
第3節 必要的共同訴訟
必要的共同訴訟とは、共同訴訟人全員の間で合一的に確定される必要が認められる訴訟である。
その特徴は、
(ア)訴訟資料の共通(双書・松本は「訴訟資料の統一」の用語を用いる)
(A)共同訴訟人の一人に対して訴訟行為をすれば全員に対してしたことになる(40条2項)。
コメント:出席している一人に対して訴訟行為をすればそれで充分。
そこで、一人が出席していれば、他の共同訴訟人が欠席していても、欠席の規定は適用されない。
コメント:40条2項は裁判所の訴訟行為には適用されない。期日の呼び出しや判決の送達は全員に対してされなければならない。
(B)共同訴訟人の一人のした訴訟行為は、それが全員に有利な場合にのみ効力を生じる(40条1項)。
(イ)手続進行の統一
(A)一人について中断・停止の事由が生じれば、全員との関係でその効力が生じる。
(B)弁論の分離・一部判決は許されない。
(C)上訴も不可分であり、一人が上訴すれば、全員との関係で移審する。
※上訴期間は独立に進行するとするのが通説である(名古屋高判昭和63年10月31日)が、高橋は反対(少数説)。
※なお、手続き進行の統一は同時審判申出訴訟においても(不完全ながら)保障されている。
(ウ)証拠資料の共通
証拠資料の共通は通常共同訴訟でも認められることから(証拠共通)、必要的共同訴訟に特有の性質ではない。
1 類似必要的共同訴訟
(1)意義
訴訟追行権を有するもの全員が一緒になって訴訟を追行する必要(訴訟共同の必要)はないが、
判決の合一確定の必要がある訴訟をいう。
(2)類似必要的共同訴訟の範囲
(A)判決効が拡張される場合
※債権者代位の場合は、類似必要的共同訴訟となる(債務者について判決効の矛盾を防ぐため)。
(B)これ以外にも、類似必要的共同訴訟を認めるべきとの議論もある。
しかし、そのような場合には、法律上判決効の矛盾抵触は生じないから質的に異なるのであり、類似必要的共同訴訟と解する必要はない。
なるべく合一に画定するのが望ましいと判断されれば、裁判所が裁量により訴訟資料や訴訟進行が共通となるように訴訟指揮権を行使すれば足りる。
※類似必要的共同訴訟を広げる立場からは、当事者が共同して訴え又は訴えられた場合にのみ、類似必要的共同訴訟となる場合があるということになる(高橋「共同訴訟について(1)」法学教室259号82頁注5)。例えば、個別提起が可能な共同所有関係に基づく訴訟がそれである。個別に提起することも可能だが、訴えが併合されれば、その瞬間から民事訴訟法40条が適用され、合一確定が保障されるというのである。
類似必要的共同訴訟と上訴の取下げ
(1)愛媛玉串料訴訟 最判平成9年4月2日
複数の住民の提起した住民訴訟は、民訴法62条1項(現40条1項)にいう「訴訟ノ目的カ共同訴訟人ノ全員ニ付合一ニノミ確定スヘキ場合」に該当し、いわゆる類似必要的共同訴訟と解するのが相当である。なぜなら、地方自治法242条の2
第4項が、「同条一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもって同一の請求をすることができない」と規定しているのは、複数の住民による同一の請求については、必ず共同訴訟として提訴することを義務付け、これを一体として審判し、一回的に解決しようとする趣旨に出たものと解されるからである。
ところで、類似必要的共同訴訟については、共同訴訟人の一部の者がした訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生ずるとされている(民訴法40条1項)。上訴は、上訴審に対して原判決の敗訴部分の是正を求める行為であるから、類似必要的共同訴訟において共同訴訟人の一部の者が上訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として上訴審に移審し、上訴審の判決の効力は上訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶものと解される。しかしながら、合一確定のためには右の限度で上訴が効力を生ずれば足りるものである上、住民訴訟の前記のような性質にかんがみると、公益の代表者となる意思を失った者に対し、その意思に反してまで上訴人の地位に就き続けることを求めることは、相当でないだけでなく、住民訴訟においては、複数の住民によって提訴された場合であっても、公益の代表者としての共同訴訟人らにより同一の違法な財務会計上の行為又は怠る事実の予防又は是正を求める公益上の請求がされているのであり、元来提訴者各人が自己の個別的な利益を有しているものではないから、提訴後に共同訴訟人の数が減少しても、その審判の範囲、審理の態様、判決の効力等には何ら影響がない。そうであれば、住民訴訟については、自ら上訴をしなかった共同訴訟人をその意に反して上訴人の地位に就かせる効力までが行政事件訴訟法7条、民訴法40条1項によって生ずると解するのは相当でなく、自ら上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならないものと解すべきである。この理は、いったん上訴をしたがこれを取り下げた共同訴訟人についても当てはまるから、上訴をした共同訴訟人のうちの一部の者が上訴を取り下げても、その者に対する関係において原判決が確定することにはならないが、その者は上訴人ではなくなるものと解される。最高裁昭和58年4月1日判決は、右と抵触する限度において、変更すべきものである。
判例の法理:@上訴人となろうがなるまいが審理の態様・判決効に違いはないこと、Aそこで、合一確定の目的を達成するには、確定遮断効・移審効を認めればそれで十分であり、当事者の地位につかせる必要まではないこと、B公益の代表者となる意思を失った者に対し、その意思に反してその地位にとどめておくのは相当でないこと、を理由として上訴人たる地位に立たないとした。
上訴人でなくなった場合の取扱い:期日の呼び出しが不要となる、中断が生じない、判決文の送達が不要、訴訟費用を負担しない、和解・放棄・訴えの取下げ等の不利益な行為についての同意が不要となる。
高橋:上訴人とならないからといって当事者としての権能すべてを失うと考える必然性はない(ドイツでもそう解されている<注17>)。少なくとも訴えの取下げ・和解・放棄については、上訴人となっていない者の同意を必要とすべきである。
反批判:公益の代表者となる意思を失った者の同意を必要とすると解するのは、はたして妥当なのであろうか(私見)。
(2)株主代表訴訟と上訴の取下げ
株主全体の集団的な利益が問題となっているのであり、株主個人の権利・法律関係が問題となっているわけではないと解されるから、住民訴訟と同様に考えてよいであろう(最判平成12年7月7日も上訴人とならないとしている)。
※なお、原告勝訴の場合にのみ対世効が生じる(片面的対世効)ので、株主代表訴訟は類似必要的共同訴訟ではないとする説もある<注19>。
(3)債権者代位訴訟
少なくとも、事実上の優先的弁済的効力が生じない場合については、債権者全体の集団的な利益が問題となっているのであり、代位債権者個人の権利・法律関係が問題となっているわけではないから、住民訴訟と同様に考えてよいのではないか(私見)。
一方、事実上の優先弁済的効力がある場合には、愛媛玉串訴訟判決の射程は及ばないであろう。
2 固有必要的共同訴訟
(1)意義
関係人全員が当事者となるのでなければ、訴訟が不適法とされる必要的共同訴訟の形態をいう。
(2)基準
管理処分権の帰属方法により主として定まる。もっとも、訴訟政策的考慮もあわせて判断すべき。
(3)類型
(ア)他人間の法律関係に変動を生じさせる場合
<民法395条の短期賃貸借契約の解除、取締役解任の訴え、婚姻の無効・取消しの訴え>
(イ)数人で管理処分・職務執行することになっている場合のその数人の管理処分権者・職務執行者
(ウ)共同所有形態における紛争の一部
<入会権の確認の訴え、共有権者全員の共有に属することの確認を第三者に対して求める場合、
共有権者全員名義への移転登記請求、遺産範囲確認の訴え、遺産分割協議の無効確認>
※共有に属する用益地のため、地役権の登記請求をする訴えは、保存行為であり単独でできるとする最判平成7年7月18日がある。この場合には、敗訴しても、土地の所有権を失うわけではない、ということを理由として保存行為とされてのであろう。
(4)固有必要的共同訴訟とする場合の副作用
(ア)一部の関係者がもれていた場合に訴え却下というドラスティックな帰結をもたらす。なるべく訴訟を適法とすべく努力すべきである。
(イ)原告側で訴訟共同の必要がある場合に、共同原告となることを拒むものがいた場合に原告側の裁判を受ける権利が侵害されかねない。入会権訴訟は入会団体に原告適格を認め、境界確定訴訟は、提訴拒否者を被告に回すということで難件はほぼクリアされた。
境界確定訴訟と上訴
「共有者が境界確定の訴えを提起するには、本来、その全員が原告となって訴えを提起すべきものであるということができる。しかし、共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。けだし、...
隣地の所有者は、相隣接する土地の境界をめぐって、右共有者全員と対立関係にあるから、隣地の所有者が共有者のうちの原告となっている者のみを相手方として上訴した場合には、民訴法47条4項を類推して、同法40条2項の準用により、この上訴の提起は、共有者のうちの被告となっている者に対しても効力を生じ、右の者は、被上訴人としての地位に立つものと解するのが相当である。」
コメント:同調しない共有者を被告に回してもよいとの結論は、境界確定訴訟の特殊性から導かれており、他の類型の訴訟には本判決の射程は及ばないと考えるべきである(伊藤)。
必要的共同訴訟と上訴期間
個別に進行するというのが通説。一方、高橋は、共同訴訟人の一人について上訴期間内であれば、判決は確定していないのであり、他の共同訴訟人の上訴を認めても弊害は少ないから認めるべきという。
固有必要的共同訴訟と上訴の取下げ
共同訴訟人の一部による、または、一部に対する上訴の取下げは無効であり効力を生じない(最判平成6年1月25日)。
コメント:もっとも、脱退は認めてもよいとのではないか、という解釈論(高田説)がある。脱退であるから判決効は及ぶという前提である(注8)。
違法に分離された事件の上訴
東京高判平成6年6月29日
いずれかの判決につき、いずれかの当事者から上訴があれば、全員に対する関係で上訴審に移審する。
高橋:原審に差し戻して全部判決をさせることとなろう。なお、類似必要的共同訴訟(株主代表訴訟等)で、一部の原告(株主)のみに対する一部判決がなされたが、それが勝訴判決であった場合に、他の原告が一部判決であることの違法を主張して控訴を申立てることができるのかについては争いがある(法教259号注7)。
固有必要的共同訴訟で当事者が欠けていた場合に控訴審で共同訴訟参加があった事例
福岡高判平成4年10月22日
一審において相当の審理が尽くされており、当事者間に異議がないと認められる場合には控訴審段階から共同訴訟参加があった場合にも瑕疵は治癒される<注19>。大阪高判平成5年3月26日・札幌高判56年6月30日・大阪高判53年5月24日。一方、審理が尽くされておらず、異議がある場合は、被告の審級の利益に配慮するため、原則として一審に差し戻すべきである。
3 同時審判訴訟
(1)意義
実体法上両立し得ない二人以上の被告に対する訴訟につき、原告の申し出があったときは、弁論および裁判を分離しないで行うという共同訴訟の審理方式の形態である。訴訟ごとに事実認定が食い違うことにより、原告が両負けすることを防止するための制度。
(2)手続き
控訴審の口頭弁論終結時までに、原告の申し出により、なされる。被告側の申し出についても類推がされる。
(3)効果
弁論及び裁判を分離しないで行うこととなる。よって、一部判決や弁論の分離はできないこととなる。
もっとも、@主張共通は働かず、A原告と被告の一人との間での和解・放棄・認諾も認められ、B原告が両方の請求を放棄した場合など両負けも生じうるし、逆に両勝ちも生じうる(判決の内容の統一までは保障されない)。Cさらに、上訴の効果は他の共同訴訟人に及ばない。
(4)問題点
原告が一方の被告Xに勝訴したときにも、Xが上訴してきたときに備えて原告は、もう一方の被告Yに対して控訴しておかないと両負け防止の目的を達成できないことになる。すなわち、Xが原告に対して控訴をしてきても、原告がYに対して控訴しておかないと、原告とYの間のY勝訴の判決は、確定し移審しないのである(∵共同訴訟人独立の原則)。そこで、実務では、原告は、印紙をはらずにYに対する控訴状も念のため提出しておき、Xが控訴をしてくれば、印紙をはってXに対する控訴を有効にするという取扱いがなされている。
(5)原告の申し出を看過して分離した場合の取扱い
原告の利益保護の制度であるから、原告が特に異議を述べなかったときは、その手続的瑕疵は責問権の放棄・喪失の対象となる(司法協会「講義案」257頁)。なお、異議を述べた場合にも、判決に影響を生じる場合にのみ破棄事由となる(伊藤)。
※手続きの中断についてどのように扱われるの?
4 選定当事者制度
(1)意義
訴訟の単純化・簡易化
(2)要件
(ア)原告又は被告となるべき者が多数存在(2人以上)
(イ)多数者が共同の利益を有すること
互いに共同訴訟人となりうる関係を有し、かつ主要な攻撃防御方法を共通にする者をいう。
弁護士代理の原則の潜脱を防止する趣旨である。
(3)選定の手続き
(ア)個別かつ無条件に各自が選定行為をする。
(イ)選定は、訴訟係属の前にしておくこともでき、訴訟係属の後にすることもできる。
上告審でもできる(?)。
(ウ)選定は、書面で証明することを要する(規則15条)
(エ) 選定の後、選定された者は、訴えを追加することが「できる」(144条)。追加したくなければ追加しなくてもよい。
(オ) 控訴審における訴えの追加には、相手方の同意が必要となる(300条3項)
(4)選定当事者の地位
(ア)選定当事者は、一切の訴訟行為を行うことができ、請求の放棄・認諾・和解もできる。
(イ)選定者は、いつでも選定の取り消しを行うことができる。
(ウ)選定を取消した時は手続きは中断し(124条5号)、他の者を選定しその者に承継させるか、あるいは、自ら承継することとなる。
(エ)選定の取り消しをした時には、別訴となるとする説もあるが(高橋)、共同訴訟となると考えるべきである(ジュリスト1105号「新民事訴訟法をめぐって」73頁)。従前の裁判所の方が、事案をよく理解しており訴訟承継の判断等をよりよくなしうると一般的にいえるからである。
(5)判決
(ア) 判決は選定者の請求ごとに個別的に内容を明らかにして書かれるべきである(高橋法教206号61頁)
(イ)選定当事者が、判決の執行までできるのかについては争いがあるものの、民事執行法23条は「当
事者」をあげているのだから、選定当事者も執行ができると考えてよい(高橋法教206号62頁)。もし、
選定者が選定当事者による執行をはばみたければ、判決後に選定の取消しを行えばよいのだから、
問題はない。また、民事執行は迅速を第一とするので形式論で考えるのが適切であることが多い。
第4章 第三者の訴訟参加
第1節 概説
紛争の統一的解決
第2節 共同訴訟参加
(1)意義
共同訴訟参加は、類似必要的共同訴訟が成立する場合に、訴訟追行権を有する者が新たに訴訟に当事者として参加することを一般的にいう。
もっとも、固有必要的共同訴訟で当事者が欠けている場合に、当該訴訟を適法とするための共同訴訟参加も認めてよいとされている。
(2)被告側への共同訴訟参加
被告側への共同訴訟参加もできる。この場合には、「自ら原告に対する請求を掲げなければならないかについては、必ずしもはっきりしないが、たんに請求棄却を求めることで足りると解しうるであろう」(双書456頁)
第3節 共同訴訟的補助参加
(1)意義
判決効が第三者に拡張され、かつ、その者が当事者に準じる重要な利害関係を有しているにも関わらず、(その者に当事者適格が認められないため、共同訴訟参加をすることができず)当事者として関与できない場合に、その第三者がする補助参加を共同訴訟的補助参加という。
(2)参加人の地位
かかる者に対しては、当事者とは独立して十分な手続保障をする必要がある。
そこで、40条1項を類推し、共同訴訟参加人と同様に扱うべきとされる(最判63年2月25日参照)。
具体的には、(ア)抵触する行為でも参加人に有利な行為はできるとされ、(イ)上訴期間も独立に計算され、(ウ)中断・中止についても独自に判断される。
第4節 独立当事者参加
1 要件
(1)他人間の訴訟係属
(2)参加の理由
(A)詐害防止参加 訴訟との利害関係 + 詐害意思
(B)権利主張参加 矛盾関係
(3)参加人の請求の定立
2 審判
(1)審理
40条1項ないし3項が準用される。合一確定の必要がある。
(2)判決
全請求につき1個の判決で同時に裁判をしなければならない。
誤って一部の請求につき判決をしてしまった場合には、追加判決をすることは許されない。追加判決をすることは許されず、上訴に服する。
(3)上訴
お互いにけん制しあって、合一確定の必要性がある。その限度で、利益変更の禁止の原則が修正さ
れる。
上訴人と被上訴人のどちらになるのか。この点については、合一確定の目的のために40条が準用されるのだから、合一確定の目的にどちらが適するかという観点から演繹的に考えればよい。大事なのは合一確定の目的であって、上訴人か被上訴人かは、条文操作の問題にすぎない。40条を準用したのは、立法論としては不適切であり、あまりその文言にこだわるべきでない。
(4)訴えの取下げ
独立当事者参加があった後も、本訴原告は訴えを取下げることができる。この場合、被告の同意のほか、参加人の同意も必要である<最判昭和60年3月15日>。
(5)和解
独立当事者参加におけるいわゆる三面訴訟の事件について、そのうちの二当事者間で当該訴訟物につき裁判上の和解をすることは許されない(東京高判平成3年12月17日)
3 訴訟脱退
(1)意義
紛争の実体に即して、三面訴訟から、二面訴訟への還元を可能にしたものである。
(2)要件および手続き
要件は、相手方の同意である。
参加人の同意も必要と解すべきである。参加人の債務名義の取得の機会を保障するためである。
手続きとしては、書面または期日において口頭でしなければならない。
(3)効果
訴訟係属が将来に向かって消滅する。
(4)脱退者に対する判決効
既判力の拡張のみ。執行力は生じない。執行力を生ぜしめたいのであれば、脱退について同意をし
なければよい(松本)。私見としては、兼子説(条件付放棄認諾説に立ちたい。条件付放棄認諾説のメ
リットは、執行力を肯定できる点である。一方、批判としては、既判力の空白部分が生じると批判
される。しかし、空白部分が生じたとしても、@その部分が争いになることは少ないのであるし、
A空白部分を生じさせたくないのであれば、脱退に同意しなければよいのであるし、B限界事例で
は、信義則による拘束力が生じるとすれば足りるから、不都合はない。
第5節 補助参加と訴訟告知
1 補助参加の意義
他人間の訴訟の結果に利害関係を持つ第三者が、当事者の一方を勝訴させるため、訴訟に参加する訴訟参加の形態をいう。
2 補助参加の要件
(1)他人間の訴訟の存在
・補助参加人は、独自の請求を定立するものではないので、事件が上告審係属中であっても差し支えないし、また、すでに事件が確定している場合であっても、再審の訴えにより訴訟係属を復活させることもできる(伊藤)。
・「他人」、つまり参加人は当事者以外の第三者でなければならない。なお、(通常)共同訴訟人の1人は、他の共同訴訟人との関係では第三者とみなされ、他の共同訴訟人やその相手方のための補助参加人となりうる(伊藤)。
(2)補助参加の利益-「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」
(ア)「法的権利ないし法的地位」
・参加申立人の「法的権利ないし法的地位」に対する訴訟の結果の影響が問題となっているのでなければならない。なぜなら、民事訴訟は法的権利・利益の保護を主眼とするからである。
・この「法的権利ないし法的地位」は、財産法上のものに限られず、身分法上、公法上のものを含む。
※訴訟の結果につき「法律上の利害関係」を有するのでなければならないなどと判例では表現される(最判昭和39年1月23日)が、これは不適切な表現というべきである。なぜなら、補助参加で問題となるのは、通常は理由中の判断に生じる判決の事実上の影響力だからである。
(イ)「訴訟の結果について」
・訴訟の結果について利害関係を有するとは、判決主文に示される訴訟物についての利害関係である必要はなく、訴訟物の前提をなす問題についての利害関係でも足りる。
(ウ)「利害関係」の有無
・訴訟の結果により影響を受けるおそれがあることをいう。その判断にあたっては、@後訴が生じうる蓋然性の大小、A前訴と後訴の関連性の程度、B前訴における争点の重要性の程度、などを考慮し、決すべきである。
3 補助参加の手続き
・参加の趣旨と理由を示して、裁判所に対し、書面又は口頭で補助参加の申出をする。
申出書は、当事者双方に送達され、どちらかから異議があった場合にのみ、決定で許否につき裁判がされる。
4 補助参加人の地位
(1) 従属的地位
(ア)補助参加の時点で被参加人のできなくなってしまっている訴訟行為はできない(45条1項但)。
(イ)抵触行為はできない(45条2項)
(ウ)訴訟自体を処分・変更する行為はできない(∵他人間の訴訟を前提として参加するものであるから)
(エ)被参加人に不利益な行為はできない(∵勝訴を目的として参加するとの趣旨から)。自白はできない。
(オ)被参加人の私法上の権利(形成権=相殺権、解除権、取消権、建物買取請求権)を行使することはできない(∵私法上の権利の行使にあたっては、その権利主体である被参加人の意思を反映させる必要性が特に強く、参加人による権利行使を認めるのは相当でないと考えられるからである)
(カ)被参加人に生じた事由を理由として、中断・中止・忌避を認めるべきではない。(∵当事者ではなく手続保障の要請は弱い)。上訴期間についても独自に進行しない(最判昭和37年1月19日 ∵補助参加人は、補助参加の性質上、当該訴訟状態に照らし被参加人のなしえないような行為はもはやできないものであるから)
(2) 独立的地位
(ア)期日の呼出状は補助参加人にも送達されなければならず、送達がなければ期日は適法に開くことができない。
(イ)従属性の範囲内では、参加人の同意をいちいち得ることなく、一切の訴訟行為をすることができる。
(3) 独立性を強化した解釈論
以上が通説からの取扱いである。これに対しては補助参加人も自己の費用で参加している以上、その独立性を強化するべきであるとして、次のような提言がなされている。
(ア)私法上の権利の行使を認めるべきである(高橋・双書)
(イ)上訴期間は独自に計算すべき(高橋・双書)
(ウ)中断・中止も場合により独自に認めるべき(谷口)
(エ)忌避も独自に認めるべき(高橋)
しかし、補助参加の申出に対する当事者の異議権は弱く(異議を申出ても不許の決定があるまでは訴訟行為ができてしまうなど)、独立性を強化することについては慎重であるべきと考える。
5 補助参加人に対する判決の効力
参加的効力である。
(ア)敗訴の場合に参加人被参加人の間でのみ生じる。
(イ)除外条件がある
(ウ)判決理由中の判断にも生じる(もっとも判決の主文を導き出すのに必要な部分に限られる<最判平成14年1月22日>)
(エ)職権調査事項ではなく、当事者の援用をまってはじめて裁判所はこれを斟酌する。
(オ)参加が強く期待されるような特別な関係がある場合にのみ生じる。なぜなら、参加的効力は通知をなしただけでも生じるところ、通知しただけでも敗訴責任を分担せしめるのが相当と言えるためには、訴訟に参加し協力することが強く期待されるような特別な関係が必要と考えられるからである(私見)。
※伊藤-参加的効力は、敗訴責任の分担の趣旨から、敗訴の原因となった事実上または法律上の事項に基づき補助参加人が主たる当事者に対して一定の実体法上の責任を負担する場合にのみ問題となる。いいかえれば、補助参加人すべてについて参加的効力が生じるのではなく、求償債務を負担する主債務者、追奪責任として損害賠償債務を負担する売主などの参加人に限って参加的効力の拘束力が問題となる。
6 訴訟告知
(1)意義
訴訟係属中、当事者が訴訟の結果につき利害関係を有する第三者に対し、法定の方式により、訴訟係属の事実を通知することをいう。
被告知者に参加の機会を与えるもので被告知者のための制度としての側面を有すると同時に、参加的効力を生ぜしめ、告知者の敗訴責任を分担させるという意味で告知者のための制度としての側面も有す。
(2)要件
(ア)訴訟継続- 上告審でもよい。補助参加は上告審でもできるから。
(イ)告知する者- 当事者、補助参加人、被告知者。
(ウ)告知される者- 訴訟参加をなしうる第三者。独立当事者参加をなしうる者を含む。
(3)効果
参加的効力が生じる(See補助参加)。
第1節 訴訟承継の効果
承継人は、当事者となり、承継の時点での被承継人の訴訟追行上の地位を承継する。
基礎による時効中断や期間遵守の効果は承継人にも及ぶ。
第2節 当然承継
承継人が、前主の法的地位を包括的に承継し、その結果訴訟追行権を基礎付けていた法的地位をも承継する場合の訴訟承継である。
第3節 参加承継・引受承継
1 参加承継・引受承継の原因
(1)係争物の譲渡
参加承継・引受承継の原因は、前主の訴訟追行権を基礎付けていた実体法上の地位の移転である(依存関係説)。なお、口頭弁論承継後の承継人と同様の争いがある(適格承継説、紛争の主体たる地位の移転説など)。訴訟の目的たる権利・義務と書いてあるが、それよりも承継の範囲は大きい(解釈)。
(2)訴訟承継主義と当事者恒定主義
不都合。そこで民事保全法62条(占有移転禁止の仮処分)・民事保全法53条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分)が定められている。これにより、当事者恒定効が生じるのと同様の目的を当事者は達成できる。
2 承継の手続き
(1)参加承継
参加申立は、訴え提起に相当するから、口頭弁論に基づき判決で裁判する。
(2)引受承継
引受申立の拒否については、当事者および第三者を審尋した上で、決定で裁判する<50条2項>)。
※引受決定をしたが、上訴審で承継原因が存在しないことが判明した場合は、請求棄却判決をする(高橋)べきであり、引受け決定を取消すべきではない。
3 審理
参加承継は、独立当事者参加と同じ(当事者は相手方の同意を得て脱退できる)。
引受承継は、同時審判申出訴訟と同じ。