物権法
物権法定主義(175条)
@法律に定めのない物権を当事者の合意により創設することはできない(例外譲渡担保)
A既存の物権に法律で定められてのと異なった内容の物権に修正する合意をすることはできない(加藤「物権法」10頁) 権利関係を明確にしかつ定型化により物の譲渡性を高める
-債権では契約自由
物権の絶対的効力(対世効)
誰に対しても主張しうる権利である。注意すべきは、対抗要件を備えて初めて完全な権利とされることである(コンメンタール24頁)。
債権は原則として相対的効力しかない(例外として対抗要件を備えた賃貸借)。
物権の排他性
相容れない権利の成立を排除する。一つの物の上に複数の所有権は成立しない。債権は排他性がない。債権関係まで調査しなければいけないとすると、物権等の流通が阻害されるからである(加藤31頁)。占有権には、排他性はない(コンメンタール25頁)
物権の優先的効力(「売買は賃貸借を破る」)
同一物件の上に矛盾する内容の物権と債権が存在する場合には、物権が債権に優先する。
債権侵害と債権の相対性
かりに、ここで債権侵害が一般に不法行為となるという命題をたてると、先行する債権の存在を知りながら、または過失によってそれと矛盾する契約関係を結んだものは、損害賠償義務を負うことになる。これでは、債権に排他性がないとした意味が実質的に潜脱されてしまう(加藤33頁)
一物一権主義
集合物ないし物の一部の上に一つの所有権は成立しない(加藤20頁)。前者を物の単一性、後者を物の独立性という(内田349頁)
(1)土地の一部の時効取得については、物の独立性についての例外が認められる。時効取得の根拠は、物の独立性と関係なく成立する占有にあるからである(コンメンタール24頁)。なお、土地の一部の上に権利が成立しないこととの関係で、附合制度が認められる。
(2)一方、集合物譲渡担保については、物の単一性の例外が問題となる[1]。
その根拠について、デバイス93頁は、「物の一部には一つの物権を認める社会的必要性が乏しいことや物権の公示の必要性からの帰結である」としている。
公示主義 物権変動にあたって外部から認識できる何らかの表象(外形)を要求する法の建前
趣旨:物権変動は観念的なもの。それを外部から認識可能にすることで、利害関係者に物権変動の事実を知らせ、法律関係の安定を図るためである[2]。
内容:不動産にあっては登記(177条)、動産にあっては物の占有の移転<占有改定を含む>(178条)、登記されていない立木や、稲立毛などは、明認方法が対抗要件である[3]。
もっとも、真実の物権変動を反映しているとは限らないので、第三者を保護する必要がある。
そこで、94条2項の類推や時効制度での保護が図られる。特に、動産では、占有改定でも対抗要件となるとされるなど物の公示が著しく不完全であるので、特に即時取得制度により第三者が特に厚く保護されている。(我妻参照)
一、物権総則
1.176条
物権は意思表示のみにより移転する(意思主義⇔形式主義)[4]。
特段の事情のない限り契約時に物権は移転するとするのが判例(最判昭和33年6月20日)<∵当事者の合理的意思>
2.177条
(1)対抗要件を必要とする物権変動→すべての物権変動<無制限説。判例は無制限説を今でも維持している>
(A説)無制限説(判例)
登記が現在の法律関係を公示する役割を果たすためには、全ての物権変動について公示される必要がある。第三者を限定することで、不都合は回避できる[5]。
(B説)利益衡量的限定説
登記を期待できるような物権変動であるか、第三者の信頼を害するか等さまざまな事情を利益衡量して決す。
少なくとも、境界紛争型の時効取得については、本条の物権変動に含まれないと考える者が多い。
(C説)意思に基づく物権変動かで区別する限定説(初期の判例-大判明治38年12月11日など)
177条は、176条を受けているので、意思表示に基づく物権変動に限定して考える。
これによると、相続や時効は、本条の物権変動に含まれないことになる。<(C説)は、今はいないと思われる>
取消し・解除・遺産分割後の第三者との関係
(A説)対抗関係でないとする説
取消し・解除・遺産分割の効果は遡及的無効であり、譲受人は権利を一度も取得しなかったことになるから、転得者は、無権利者からの譲受人ということになり、対抗関係に立たないことになる。94条2項類推で保護すればよい。
(B説)対抗関係とする説(判例)
取消し・解除・遺産分割の効果は法律的には遡及的無効といっても、これは法律関係の簡明を図るための法的擬制にすぎず、むしろ第三者との関係ではその実体に応じて復帰的物権変動があるものとして扱うべきである。
詐欺取消前の善意の第三者との関係
登記は不要(最判49年9月26日)。
詐欺取消を対抗することができない(「取消を善意の第三者に対抗することを得ず」)結果、前主後主の関係に立つことを理由とするものと思われる。
一方、詐欺では帰責性は小さく、権利保護要件として登記が必要とする学説も有力である<これらの学説によっても、仮登記まで得てなすべきことをなしていた者は保護されるとされることが多い-最判49年9月26日の事案について内田は判例の結論を支持する>。
契約解除前の第三者と解除者の関係
登記は必要(詐欺の場合と異なり、「第三者の権利を害することを得ず」と条文上なっている。これは、遡及効により害することを得ずということであり、遡及効が否定されるだけであって、解除による復帰的物権変動も登記があれば主張できるという対抗関係説が妥当である。)これに対し、権利保護要件として登記が必要とされるとの説明も可能。権利保護要件としての登記は、利益衡量でその要否が決まるので、94条2項や96条3項との比較もしやすく、答案は書きやすい。ただ、判例は権利保護要件との文言を用いたことはなく、判例の理解としてはやや疑問。
遺産分割前の第三者
登記は必要(詐欺の場合と異なり、「第三者の権利を害することを得ず」と条文上なっているので、解除の場合と同様に対抗要件として登記が必要となる、と理解したい)
時効と登記(最判昭和46年11月5日)
別冊ノート参照
(2)第三者
第三者→登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に限る
(A説)第三者とは当事者とその包括承継人以外の者すべてをさすとする立場(無制限説)
不法行為者に対しても、物権変動を対抗するには登記が必要となる。
(B説)登記の欠缺につき正当な利益を有する第三者とする立場(=判例)
取引関係の保護だけでなく、法律関係の安定のために公示が要求されると解す。
不法行為者に対しては、登記なくして物権変動を対抗できる。
土地の譲受人が賃料を請求する場合にも、登記がないと物権変動を対抗できない。
(C説)物権を相争う関係にある者とする説=母法たるフランス法の立場
取引関係の保護に限定する。
不法行為者に対して、登記なくして物権変動を対抗できる。
土地の譲受人が賃料を請求する場合にも、登記なくして物権変動を対抗できる。
二重譲渡は可能か
(A説)不完全物権変動説(我妻)
可能。
登記がされるまで物権変動は不完全であり、その限度で譲渡人にも、所有権が残っているから。
(B説)相対的物権変動説(加藤)
可能。
登記がされるまで物権変動は当事者間で物権が移転する効力しか有しないので、第三者との関係では、物権が譲渡人に依然として残っている。
我妻とほとんど同じ。ちょっと理論をつめただけ(by加藤)。
(C説)公信力説
二重譲渡は不可能。∵権利を譲渡してしまった者は(誰に対する関係でも)もはや権利者ではない。[n1]177・178条は、登記を信頼した善意無過失の第三者が、公信の原則により保護されることを定めたものである。
批判:@公示のない物権変動に対第三者対抗力を認める議論であり、177条の文言に正面から反している(加藤「物権法」)。
A178条と192条も、両方公信の原則に関係することになるが、両者の関係の説明に困る。
背信的悪意者・悪意者
悪意であっても、第三者に含まれる。<自由競争の範囲内>[6]
背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有しない者に含まれる。
3.178条 動産物権変動の対抗要件
対抗要件は、物の引渡である。これには、占有改定も含まれると解される。
動産譲渡担保の対抗要件も、物の引渡であり、占有改定で足りるとされる。
(公示として不十分であり、プレートによる公示を要求すべきとの批判も強い<伊藤眞>、なお即時取得する者の出現を防ぐためプレートで権利者であることを示すことも行われる)
動産質権では、占有の移転(占有改定を除く)が成立要件であり、本条は実際上問題とならない。
4.179条<混同>
二、占有権
...
(未完成)
[1] 内田348頁には、単一性の例外が認められる理由はかかれていない。あまり重要でないということか。
[2] 「なぜ公示するかといえば、利害関係を持つ他人に権利の存在を知らせるためである」(内田448頁)。取引の安全だけではない=賃料を請求する事例を想起せよ。
[3] 登記は登記官の過失により喪失しても対抗力は失われないが、明認方法は継続して存在しなければ対抗力を失う
[4] 意思主義は、当事者の意思を尊重するもので当事者自治を拡張すると共に、取引の促進に資するもので、近代的である(立法者に先見の明があった)。もっとも、一定の場合には、意思主義が修正されることがある。例えば、遺言は、厳格な方式が要求される。これは相続に関する争いを防止するためである。
[5] 相続放棄や相続による持分取得の物権変動も本条の物権変動に含まれるが、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者が一人もいないということに判例理論ではなりそう(相続につき最判昭和38年2月22日[5])。この状態をさして、判例理論も実質的に無制限説を修正していると表現されることがある=ex.内田438頁)
[6] これに対し、「仮に自由競争の原理が働くとすれば、それはいずれが先に契約を締結するかという契約締結の段階においてであって、一方が先んじて契約をしたのに、契約の成立要件でもない登記がなければ悪意の第三者にも負けてしまうというのは、自由競争ではなく横領の奨励としか思えない」(内田T448頁)などの批判がある。
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